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下手な小説より面白い
浦沢直樹の代表作である。
この手の漫画は極たまに毛嫌いする人もいるが、大半の人に好感を得やすい。
話のジャンルはサイコ・サスペンス。
そこに、東西冷戦時代の政治的要素も加わって、物語の難易度は少々高め。
浦沢直樹の同系の作品では『20世紀少年』 『PLUTO』等があるが、どの作品も共通しているのは、“すべての道はローマに続く” だ。(ちょっと違うか・・・)
話の筋は一貫しているが、次の項に移るとふっと前項とは関係のない話から始まったりする。
「あれ?いきなり話が飛んだぞ?」と思って読み進めていくと、後々話が繋がるという仕組みだ。
また、一巻の一つの話にしか出てこなかった脇役キャラが、ずっと後になって再び登場したり、主要キャラの、主人公とは別の時間軸での話が、忘れた頃に出てきたりする。
登場人物はかなり多いが、しっかりと管理されている。
学生のころ、古典の先生が「源氏物語のすばらしさは、登場人物が桁はずれに多いのに、辻褄が合わなくなるようなミスがないところだ。」と言ったことを思い出した。
例えば、既に死んだはずのキャラを、後々忘れて登場させてしまったとき、「実は死んだと思っていた彼は生きていたのである」 のように誤魔化して、筋をおかしくしてしまうような失態がないということである。(意図的な場合を除く)
また、浦沢直樹は個々のキャラを大事に扱うので、主人公の占めるウェイトは他の漫画に比べるとだいぶ少ないが、たとえ主人公が一つの話に全く登場しなくても、(大げさにいうと丸々一冊に登場しなくても)飽きることなく、違和感もない。
言い換えると、脇役を使っての話の盛り上げ方が巧いのだ。
ベルリンの壁崩壊前の東ドイツのことは、誇張した部分や、歴史誤認と思われる箇所もあるだろう。
しかし、さすがに作者も取材に限界があったと思うし、こと細かく言いすぎるのは少々酷である。
日本人の漫画家が、海外を舞台に話を構成するのは、容易なことではない。
同作品は、世界中で(ドイツでも)高い評価を得ており、ハリウッドでは映画化もされる。
世界に誇れる日本の漫画だといっても良い。